健診で見つかった、おなかの中の異変
来院のきっかけは、蛋白漏出性腸症という腸の病気の経過観察でした。 血液検査でアルブミン(たんぱく質の一種)の値が低く出ており、原因を確認するために腹部の超音波検査を行ったところ、脾臓の中に境界のはっきりしない、これまでとは違うエコーの領域が見つかりました。
年齢や見た目の変化だけでは分からない、こうした体の中の小さなサインを拾い上げられるのが、超音波検査の大きな役割です。
手術に踏み切る前に、体調を整える
脾臓のしこりだけを見れば、すぐに手術という判断もあり得ました。しかし今回は、蛋白漏出性腸症によって体力・栄養状態が低下していたため、まず内科治療でアルブミンや総蛋白の値を落ち着かせることを優先しました。
「腫瘤を取る」ことと同じくらい、「その子の体が手術に耐えられる状態かどうか」を見極めることを大切にしています。
体調が安定したことを確認したうえで、脾臓摘出手術の日程を決定しました。
手術と、麻酔管理という「見えない仕事」
全身麻酔での脾臓摘出手術を実施しました。11歳というシニア期の犬にとって、麻酔中のバイタルサイン(呼吸・血圧・心拍・酸素飽和度など)を絶え間なく観察することは、手術そのものと同じくらい重要な工程です。
術中、血圧が一時的に下がる場面がありましたが、輸液と循環管理により速やかに回復し、以降は安定した数値で手術を終えることができました。数分おきの記録が、小さな変化を早期に捉える助けになります。
当院では、全身麻酔中は複数の項目を一定間隔で記録し続け、変化があれば即座に対応できる体制を整えています。
術後の様子と、これから
病理検査の結果が判明次第、今後の経過観察や治療方針を改めてご家族と相談しながら決めていきます。