症例紹介

9歳ビーグルちゃんの
慢性胆嚢炎にともなう胆嚢切除手術

いわせ犬猫クリニック 院長 岩瀬英一郎

「数日前から食欲がないみたい…」
日常の些細なサインの裏に、見過ごせない病気が隠れていることがあります。
今回は、9歳のビーグルちゃんに対して行った、慢性胆嚢炎(まんせいたんのうえん)による胆嚢摘出手術の症例と、当院での安全な麻酔・術後管理についてご紹介します。
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年齢9歳(シニア期)
犬種・性別ビーグル・メス(避妊済)
主訴数日前からの食欲不振
対応超音波(エコー)検査 → 慢性胆嚢炎と診断し、胆嚢切除手術を実施

ご来院のきっかけと検査

「先週から食欲が落ちている」と心配された飼主様がご来院されました。当日は少し元気や食欲が戻りつつあるご様子でしたが、シニア期であることも考慮し、念のため超音波(エコー)検査を行いました。

胆嚢のエコー画像
実際の超音波(エコー)画像。胆嚢内に泥状の貯留物が蓄積している様子が確認されました。

検査の結果、胆汁をためる「胆嚢」という臓器に慢性的な炎症が起きており、泥状の物質(胆泥)がたまっている状態でした。 犬の胆嚢の病気は初期段階では無症状のことが多く、発見が遅れると胆嚢が破裂して腹膜炎を起こし、命に関わる危険性があります。今後の再発や破裂のリスクを考慮し、飼主様とご相談のうえ、予防的に胆嚢を摘出する手術を行うこととなりました。

手術中の安全と「痛み」の管理(麻酔・ペインコントロール)

胆嚢の摘出はお腹を開ける手術となるため、わんちゃんの体への負担と痛みをいかに減らすかが重要です。当院では、複数の麻酔薬や鎮痛薬を細かく組み合わせることで、より安全な麻酔管理を心がけています。

術後のきめ細やかなモニタリング

手術が無事に終わった後も、油断はできません。当院では心拍数や呼吸、血中酸素飽和度などを定時で細かく記録し、覚醒後の状態をしっかりと見守ります。

麻酔・術後モニターの記録
手術直後から夜間にかけてのモニター記録。状態が安定しているかを細かくチェックします。

また、手術後は「尿量」が非常に重要な指標となります。麻酔や手術の影響で腎臓の働きが落ちていないかを確認するためです。今回のケースでも尿道カテーテルを使用し、尿量を厳密に測定しました。

術後一時的に尿量は減少しましたが(2.0ml)、適切な点滴や血圧管理を継続した結果、術後10時間にはしっかりと十分な尿量(350ml)が確認できたため、無事に管を外すことができました。 同時に、吐き気止め(セレニア)や炎症を抑えるお薬(プレドニン)、感染予防の抗生剤などを注射し、術後の不快感もしっかりと和らげています。

💡 術後も快適に過ごしてもらうために

手術が終わって麻酔から覚めた後も、痛み止め(フェンタニル)を持続的に投与することで、「痛くてつらい」という思いを極力させないよう配慮しています。

飼主様へお伝えしたいこと

わんちゃんの胆嚢疾患は、ある日突然、激しい嘔吐や腹痛、黄疸といった重篤な症状を引き起こすことがあります。「最近少し元気がない」「食欲にムラがある」といった些細な変化が、実は内臓からのSOSかもしれません。

今回は、飼主様が「食欲不振」という小さなサインを見逃さず、早めに受診してくださったおかげで、大事に至る前に安全に手術を行うことができました。

定期的なエコー検査で早期発見を

胆嚢の病気は血液検査だけでは分からないことも多く、超音波(エコー)検査が非常に有効です。シニア期(7歳〜)に入ったわんちゃんは、定期的な健康診断やエコー検査を受けることをおすすめします。気になることがあれば、いつでもご相談ください。

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※本記事は実際の症例をもとに、プライバシーに配慮して構成しています。