症例紹介

定期検診で見つかった
脾臓と副腎の腫大・摘出手術

いわせ犬猫クリニック 院長 岩瀬英一郎

病気は、目に見える症状が出てから気づくこともあれば、健康診断などで偶然見つかることもあります。
今回は、クッシング症候群と甲状腺機能低下症の治療中のワンちゃんで、定期的なエコー検査によって脾臓と右副腎の腫大(しこり)が発見され、両方の摘出手術を行った症例をご紹介します。定期的な検診の大切さがわかるケースです。
🐾
分類犬(Mix)
性別メス(避妊手術済)
基礎疾患クッシング症候群、甲状腺機能低下症
主訴定期検診(エコー検査)で異常を発見

定期検診での発見

こちらのワンちゃんは、以前からクッシング症候群と甲状腺機能低下症という、ホルモンに関する病気の治療を頑張ってくれていました。
日々の体調管理の一環として定期的にエコー検査を行っていたところ、脾臓にマス(しこり)ができていること、そして右側の副腎が大きくなっていること(腫大)が確認されました。

脾臓のエコー画像
エコー検査画像:脾臓に見つかったマス(しこり)
副腎のエコー画像
エコー検査画像:腫大した右副腎

術前の血液検査(2026/09/12)

手術前の健康状態を把握するため、血液検査を実施しました。基礎疾患の影響もあり、いくつかの項目で基準値から外れているものがありました。
※表中のピンク色でハイライトされている項目は、基準値より高い(または低い)結果を示しています。

検査項目 / 正常値 結果 単位
生化学検査
血糖 GLU75〜128106mg/dL
血中尿素窒素 BUN9.2〜29.216.8mg/dL
クレアチニン CRE0.4〜1.40.56mg/dL
GOT/AST17〜4439U/L
GPT/ALT17〜7899U/L
アルカリフォスファターゼ ALPi0〜89287U/L
GGT5〜149U/L
アルブミン ALB2.6〜44.3g/dL
CPK49〜166205U/L
中性脂肪 TG30〜133113mg/dL
総コレステロール TCHO111〜312278mg/dL
総蛋白 TP5〜7.27.9g/dL
ナトリウム Na141〜152148mEq/L
カリウム K3.8〜53.7mEq/L
クロール Cl102〜117112mEq/L
血液学検査
白血球数 WBC60〜17087100/μl
赤血球数 RBC550〜85097410000/μl
ヘモグロビン量 Hb12〜1821.8g/dl
ヘマトクリット Hct37〜5563.7%
平均赤血球容積60〜7765.4fL
平均赤血球血色素量19.5〜24.522.4pg
平均赤血球血色素濃度32〜3634.2g/dl
血小板数 PLT20〜5045.210000/μl

手術に向けての慎重な準備

脾臓や副腎にできたしこりは、そのままにしておくと破裂して大出血を起こしたり、悪さをするホルモンを過剰に出したりする危険性があります。今回はご家族としっかりご相談の上、脾臓と右副腎の両方を摘出する手術を行うことになりました。

持病(基礎疾患)がある中での手術となるため、麻酔の管理は特に慎重に行う必要があります。当院では、ワンちゃんの状態に合わせて綿密な麻酔計画を立てました。

麻酔・手術の概要

手術と術後の経過

手術は長時間に及びましたが、心拍数や血圧、血中酸素飽和度などを細かくモニタリングしながら、安全第一で進めました。
無事に脾臓のマスと腫大した右副腎を摘出することができました。

摘出した脾臓と副腎
摘出された脾臓(左)と右副腎(右)

術後のケア

術後も痛みを和らげ、状態を安定させるために、点滴(フィジオ140)にお薬(フェンタニル、ドーパミンCRI)を混ぜて投与しました。また、感染を防ぐための抗生物質(バイトリル)や制吐剤(セレニア)の注射も行い、しっかりとしたサポートを続けています。

術後の尿量:

※術後18時間の時点で200mlの尿が確認され、順調な経過をたどっています。

麻酔記録

長時間の麻酔中も、スタッフがつきっきりでバイタルサイン(心拍数や呼吸数など)を記録・監視し、安全な手術環境を維持しました。

時間 (2026-09-24〜25) 心拍数 (HR) 脈拍 (PR) 呼吸数 (RR) SpO2 (%) 体温 (T1)
20:151171171010025.1
20:308789109925.6
20:4579781010023.3
21:009697109923.0
21:158280109922.6
21:3083831010022.4
21:457978109922.5
22:008180109922.5
22:1510293109922.5
22:308583109522.5
22:456969109322.6
23:00103102109222.8
23:158685109523.4
23:308988109623.8
23:45106106109922.7
00:00 (9/25)10694109922.3
00:15---84987022.2
00:30---741007122.9

定期的な健康診断の大切さ

今回のケースのように、ご自宅では元気そうに見えても、体の中では病気が静かに進行していることがあります。特にシニア期に入った子や、持病がある子にとっては、エコー検査や血液検査などの定期的なチェックが、早期発見・早期治療の大きな鍵となります。

「最近検査していないな」「持病があって心配」など、気になることがあれば、お気軽に当院までご相談ください。その子に合った検査プランをご提案させていただきます。

大切なご家族の健康を守るために

言葉を話せない動物たちだからこそ、私たちが変化にいち早く気づいてあげることが大切です。 定期的な検診で、安心できる毎日をサポートいたします。

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※本記事は実際の症例をもとに、プライバシーに配慮して構成しています。