症例紹介

11歳トイ・プードルちゃんの
シリコン異物誤飲による急性腸閉塞の緊急手術

いわせ犬猫クリニック 院長 岩瀬英一郎

「朝、ふと目を離した隙におもちゃを飲み込んでしまったかもしれない…」
わんちゃんの誤飲は、日常に潜む身近で恐ろしい事故の一つです。
今回は、11歳のトイ・プードルちゃんがシリコン状の異物を飲み込んでしまい、急性腸閉塞(イレウス)を引き起こして緊急手術となった症例をご紹介します。飼い主様の迅速な判断が、小さな命を救う鍵となりました。
🐾
年齢11歳8ヶ月(シニア期)
犬種・性別トイ・プードル・男の子
主訴頻回な嘔吐と下痢(朝にシリコン状の異物を誤飲)
対応超音波(エコー)検査で急性腸閉塞と診断し、緊急開腹手術を実施

ご来院のきっかけと検査

夜間から頻繁に嘔吐と下痢を繰り返し、ぐったりとした様子でご来院されました。血液検査を行ったところ、重度の脱水症状によって血液が濃縮しており、強い炎症や腎臓への負担を示す数値が確認され、一刻を争う危険な状態でした。

飼い主様から「朝、シリコン状のものを飲み込んでしまったかもしれない」という重要なお話を伺っていたため、直ちに超音波(エコー)検査を実施しました。

【術前エコー画像】小腸内に強い陰影を伴う異物像が確認されました。(※プライバシー保護のため画像を一部加工しています)

エコー検査の結果、小腸内に異物が詰まり、その手前の腸管が液体やガスでパンパンに拡張している「機械的イレウス(腸閉塞)」を起こしていることが判明しました。放置すれば腸が壊死して破裂を招く恐れがあったため、直ちに緊急開腹手術を行うことになりました。

緊急手術と異物摘出

慎重にお腹を開けて確認すると、シリコン状の異物が完全に腸を塞いでしまっていました。血流が滞った腸管は著しく充血し、暗赤色に変色して強いダメージを受けていました。

術中の充血した腸管
【術中写真】異物が詰まり、血流が滞って著しく充血・うっ血した腸管。

血流が止まった状態が長く続くと、腸の組織が壊死してしまいます。幸いなことに、腸管を切開して原因となっていたシリコン状の異物を全量摘出すると、圧迫されていた腸管の血流が改善し、組織が生き残れる(生残性がある)ことが確認できました。その後、丁寧に縫合と洗浄を行い、無事に閉腹しました。

摘出されたシリコン異物
【摘出物】腸を切開し取り出されたシリコン状の異物。これが腸を完全に塞いでいました。

シニア期の安全な麻酔と術後管理(ペインコントロール)

11歳というシニア期であり、さらに重度の脱水を伴っていたため、麻酔には細心の注意が必要でした。わんちゃんの体への負担と痛みをいかに減らすかを最優先とし、当院では以下のステップで麻酔・周術期管理を行いました。

💡 術後も快適に過ごしてもらうために

手術が終わって麻酔から覚めた後も、痛み止めや吐き気止め、炎症を抑えるお薬などを適切に投与することで、「痛くてつらい」「気持ち悪い」という思いを極力させないよう配慮してケアを行っています。

獣医師からのメッセージ

シリコンやゴム製品、プラスチックのおもちゃなどは、レントゲン検査に写りにくい場合が多く、超音波(エコー)検査による迅速な診断が救命の鍵となります。今回はご家族様が「誤飲の可能性」をしっかりと把握されており、夜間の異変に気づいて早期に連れてきていただいたため、腸が壊死して破裂する前に異物を摘出することができました。

「何かを飲み込んでしまったかもしれない」「嘔吐を繰り返して水も飲めない」といった症状が見られた場合は、様子を見ずにできるだけ早く当院までご相談ください。

お電話でのご相談はこちら

※本記事は実際の症例をもとに、プライバシーに配慮して構成しています。