いわせ犬猫クリニック 院長 岩瀬英一郎
| 年齢 | 4歳5ヶ月 |
| 犬種・性別 | ミックス(小型犬)・メス(避妊済) |
| 主訴 | 前日からの下痢、当日の嘔吐(泥状・異臭) |
| 対応 | エコー検査で胆嚢炎と診断。内科治療で改善が見られなかったため、腹腔鏡下胆嚢切除術を実施 |
「前日の夜から下痢をしており、今日は嘔吐もした。吐いたものは泥のような色で、腐った卵のような臭いがした」とご心配された飼主様がご来院されました。
血液検査では軽度の脱水症状が見られる程度で大きな異常はありませんでしたが、超音波(エコー)検査を行ったところ、胆汁をためる「胆嚢」という臓器に炎症が起きており、泥状の物質(胆泥)がたまっている「胆嚢炎」であることが分かりました。
お薬(抗菌薬や消炎剤、吐き気止めなど)による内科治療を約3週間続けましたが、エコー検査での改善が見られず、ゼリー状の物質が溜まる「胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)」へ進行している疑いがありました。
内科治療を続けても病状が進行する場合、胆嚢が破裂したり、管が詰まってしまったりする命に関わるリスクが高まります。そのため、飼主様とご相談のうえ、外科的手術(胆嚢の摘出)を行うこととなりました。
胆嚢の摘出は通常、お腹を大きく開ける手術になりますが、今回は体への負担が少ない「腹腔鏡(ふくくうきょう)」を用いて行いました。安全に手術を行うため、細やかな麻酔管理と痛みのケア(ペインコントロール)を実施しています。
腹腔鏡手術はお腹の傷が小さいため、術後の痛みが少なく回復が早いのが特徴です。とはいえ、術後も継続的な疼痛管理(痛み止め)と全身管理を行い、早期のリカバリーをサポートしました。
術後は点滴や持続的な痛み止めに加え、抗菌薬や炎症を抑えるお薬、吐き気止めなどを適切に投与し、術後の不快感を和らげています。
わんちゃんの胆嚢の病気はシニア期に多いと思われがちですが、今回の症例のように4歳という若い年齢でも発症することがあります。初期の段階では、下痢や嘔吐といったよくある胃腸炎のような症状と区別がつきにくいのが特徴です。
内科的な治療で改善が見られない場合は、超音波(エコー)検査での定期的な確認が非常に重要です。重症化して胆嚢が破裂する前に、体への負担が少ない腹腔鏡手術を行うことで、スムーズに日常生活へ戻ることができます。
「いつもと違う下痢が続く」「吐いたものの色や臭いがおかしい」といったちょっとした変化が、内臓からのSOSかもしれません。気になる症状が続く場合は、お早めに当院までご相談ください。
※本記事は実際の症例をもとに、プライバシーに配慮して構成しています。