黒く見える膀胱の中に、白く光る粒がたくさん浮かんでいます。これが尿中の結晶や小さな結石で、尿道に流れ込むと詰まりの原因になります。
BUN 18.3 mg/dL、クレアチニン 1.36 mg/dLと正常範囲。尿が出ないことによる腎臓への影響は認められませんでした。
K 3.8 mEq/Lと正常。尿道閉塞で危険なのがカリウムの上昇ですが、心臓への影響が出る前の段階でした。
ヘマトクリット 51.6%、ナトリウム 158 mEq/Lとやや高値で、軽度の脱水を示す変化でした。肝臓などその他の項目に大きな異常はありません。
雄猫の尿道閉塞は、体の構造上くり返しやすい病気です。飼い主様とご相談のうえ、根本的に詰まりにくくする手術を選択しました。
陰茎の先端に近い部分の尿道がとても細く、結晶や小さな結石が引っかかりやすい構造です。
膀胱内に多量の結晶・結石が残っており、詰まりを解除しても再び閉塞する危険が高い状態でした。
細い陰茎部の尿道を切除し、太い骨盤部の尿道を会陰部に開口させる手術です。尿の出口が広がり、詰まりにくくなります。
毛刈りと消毒を行った手術直前の会陰部です。便による汚染を防ぐため、肛門には一時的に巾着縫合をかけています。
尿道閉塞は腎臓や心臓にも負担がかかる病気です。全身状態に配慮した麻酔管理のもと、2026年10月に手術を行いました。
アトロピン、フェンタニル、ミダゾラムで前投薬を行い、プロポフォールでスムーズかつ安全に導入。術中はソルアセト点滴による輸液管理に加え、フェンタニルCRI(持続投与)で麻酔中の痛みをしっかり抑えました。
うつ伏せで骨盤を高くし、尾を前方に固定した体勢で行いました。会陰部を正面から確実に視野に入れるための体勢です。
細い陰茎部の尿道を切除し、骨盤部の太い尿道を会陰部の皮膚に縫い合わせて、新しい尿の出口をつくりました。あわせて去勢手術も同時に行いました。麻酔時間は約1時間30分でした。
心電図、心拍数、呼吸数、血中酸素飽和度(SpO2)、体温を継続的に監視しました。手術中のSpO2は100%を維持し、酸素と医療用空気を混合した吸入気(吸入酸素濃度69%)で呼吸を管理しました。体の小さな猫は手術中に体温が下がりやすいため、保温を行いながら管理しました(36.7℃→35.7℃)。
| 項目 | 20:45 | 21:00 | 21:15 | 21:30 | 21:45 | 22:00 | 22:15 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 心拍数(回/分) | 161 | 159 | 213 | 127 | 177 | 199 | 166 |
| 脈拍数(回/分) | 148 | 152 | 149 | 169 | 172 | 199 | 126 |
| 呼吸数(回/分) | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 |
| SpO2(%) | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 92 |
| 吸入酸素濃度(%) | 69 | 69 | 69 | 69 | 69 | 69 | 69 |
| 体温(℃) | 36.7 | 36.7 | 36.5 | 36.3 | 36.1 | 35.9 | 35.7 |
日本光電の生体情報モニターで記録した定時記録です。手術中は酸素化・循環ともに安定して経過しました。
手術で詰まりにくくはなりますが、尿石症そのものが治ったわけではありません。術後のケアと再発予防が大切です。
傷が落ち着くまでエリザベスカラーを着用し、患部を舐めないようにします。
尿の出口が広がる一方で細菌が入りやすくなるため、尿路感染がないかを定期的に確認します。
療法食と十分な飲水で、結晶や結石ができにくい尿の状態を保ちます。
術後は新しい尿の出口に尿道カテーテルを留置して傷口を守り、フィジオ140の点滴で全身状態と尿量を管理しました。術後1週間で自力での排尿を確認し、退院となりました。