Case Report — 症例レポート

犬歯の歯ぐきにできた
しこり(歯肉腫瘤)の切除

健康診断で見つかった、13歳のフレンチ・ブルドッグの歯ぐきの増生

いわせ犬猫クリニック 院長 岩瀬英一郎

01

患者情報・発見のきっかけ

品種・年齢・性別
フレンチ・ブルドッグ / 13歳 / 雄
発見のきっかけ
定期の健康診断で、お口の中をチェックした際に見つかりました。
所見
左上の犬歯の外側の歯ぐきが大きく盛り上がり、歯の根元を覆うほどのしこり(歯肉腫瘤)になっていました。表面はなめらかで、ただれや出血はみられませんでした。
手術前の口の中。左上の犬歯の外側に、赤みのある歯ぐきのしこり
手術前

左上の犬歯(写真中央の白い歯)に、赤くふくらんだ歯ぐきがかぶさっています。ご家庭では唇をめくらないと気づきにくい場所です。

02

手術を選択した理由

今は痛がる様子がなくても、歯ぐきのしこりは少しずつ大きくなることがあります。飼い主様とご相談のうえ、小さいうちに切除し、組織を詳しく調べることにしました。

見た目だけでは判断できない

歯ぐきのしこりには良性のものから悪性腫瘍までさまざまな種類があり、見た目では区別できません。切除して病理検査を行うことで、正確な診断につながります。

歯周病の悪化を防ぐ

盛り上がった歯ぐきと歯のすき間には汚れがたまりやすく、歯周病が進む原因になります。

噛んで傷つく前に

大きくなると食事のたびに噛んでしまい、出血や感染を起こすことがあります。小さいうちに取るほど、体への負担も少なく済みます。

03

麻酔管理と手術

13歳と高齢で、さらにフレンチ・ブルドッグは鼻が短く呼吸の管理に注意が必要な犬種(短頭種)です。気管チューブで呼吸の通り道をしっかり確保し、全身状態を確認しながら手術を行いました。

1
麻酔導入・術中管理

アトロピン、フェンタニル、ミダゾラムで前投薬を行い、プロポフォールでスムーズかつ安全に導入しました。術中はイソフルランと酸素による吸入麻酔で維持し、ソルアセト点滴による輸液管理に加え、フェンタニルCRI(持続投与)で痛みをしっかり抑え、ドーパミンCRIで血圧を安定させました。

2
手術(歯肉腫瘤の切除)

犬歯を残したまま、盛り上がった歯ぐきを付け根から切除しました。健康な歯ぐきはできるだけ残し、歯の根元をきれいに露出させています。

3
病理検査へ

切除した組織は病理検査に提出し、しこりの正体を顕微鏡で詳しく調べます。

切除した歯ぐきのしこり。淡いピンク色のかたまり
切除したしこり 弾力のある、しっかりとした組織でした。この組織を病理検査で調べます。
手術後の口の中。犬歯の根元の歯ぐきがすっきりしている
手術後 しこりがなくなり、犬歯の根元が見えるようになりました。犬歯はそのまま残しています。
04

術後管理と今後のケア

今回のしこりは良性でしたが、このタイプはまれに同じ場所に再発することがあります。定期的にお口の中を確認しながら、経過を見守っていきます。

術後の食事

傷口が落ち着くまでは、やわらかいフードやふやかしたフードで、患部への刺激を減らします。

定期的なチェック

再発がないか、定期的にお口の中を確認します。早く見つかれば、それだけ小さな処置で済みます。

おうちでのデンタルケア

歯みがきで歯ぐきを清潔に保つことが、歯周病や歯ぐきのトラブルの予防につながります。

術後の経過

麻酔からの目覚めは良好で、抗生物質と消炎剤の注射を行い、手術当日に退院となりました。病理検査の結果は、歯を支える組織(歯根膜)から発生する良性の腫瘍「周辺性歯原性線維腫」(骨形成性エプリス)でした。悪性の所見はなく、切除により予後は良好と考えられます。

健康診断
歯ぐきのしこりを発見
手術当日
歯肉腫瘤の切除
手術当日
経過良好・日帰り退院
SUMMARY — まとめ

お口の中のしこりは、
健康診断で早く見つけられます。

01
気づきにくい場所にできる

歯ぐきのしこりは唇の内側や奥歯の近くにできることが多く、痛みも少ないため、ご家庭では見過ごされがちです。

02
見た目では良性・悪性がわからない

良性のものでも大きくなると歯周病の原因に。悪性の場合は早期の治療が大切です。正体は病理検査で確かめます。

03
シニア期こそ定期健診を

年齢とともにお口のトラブルは増えていきます。健康診断のときに、お口の中までしっかりチェックします。

当院では、健康診断での早期発見から外科手術・病理検査まで一貫して対応し、高齢犬や短頭種の麻酔管理にも十分な体制で臨んでいます。

歯ぐきが腫れている、口臭が気になる、口から血が出る——
そんな時は、お気軽にご相談ください。

03-3871-3122
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